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矢部壮大さん/broocH

ヘアメイクの夢を叶えるため1年半で最初のサロンを退職。その後、多くの海外情報に感化されて、ロンドンのサロンで働くことを決意し渡英した。その滞在中に、場所や職種ではなく自分自身の努力に問題点があると悟る。そして、自分に適しているのは美容師として日本で働くことだと再認識した。

ライター 前田正明 | カメラ 奥村浩毅 | 配信日 2011.12.8

自分は世界レベルの人間だと思いロンドンに渡る

ヘアメイクに憧れていた私は、自分のやりたいことを追求しようと思い退職しようと考え始めました。ただ、何も技術を修得していなかったので、このまま辞めてしまえばただの精神的に弱い人間になってしまいます。そこで、せめてシャンプー、ブロー、カラーリングまではマスターしようと頑張り、1年半後に退職しました。その時に考えていたことは、日本のトップサロンに勤めたのに理想と現実にギャップがあったこと。さらに、パリやロンドンなど多くの海外情報に影響されて、『自分は日本規格ではなく、もしかして世界レベルの人間なのかも』と超ポジティブに思い始めたんです(笑)。そこで、今まで行ったことのないロンドンで仕事をしようと考えました。以前、カラーリングのモデルをしてくれた人がロンドンに留学するというのでその人を頼り、親に資金を工面してもらいロンドンに渡りました。

場所ではなく自分自身の問題だと気づき始める

渡英しながらも、私は英語が話せないしコネクションもありません。そこで、ロンドンの街を歩いている日本人に話しかけ、「ロンドンにいる日本人の美容師さんを知りませんか」と尋ね回ったんです。すると、意外にも日本人の経営者さんまでたどり着くことができたんです。そしてその方を紹介してもらい、それまでの経緯と自分の思いを伝えたところ心良く雇っていただくことができました。ただ、アシスタントとして一生懸命頑張りましたが、なぜかロンドンも違うなと感じたんです(笑)。技術的には日本人美容師の方が上手いし、でもロンドンはセンスがある。要するに場所ではなく、自分自身の問題なんじゃないかという結論に達したんです。サロンの日本人スタッフと話すと、「私は日本に帰るよ。だって、ロンドンの人はオシャレじゃないから」って言うんです。これも驚きで、よく見ればおしゃれでカッコいい人はごく一部なんですね。日本とロンドンの感覚の違いでしょうね。

基礎技術を修得しなければセンスは発揮できない

センスの面で、日本人は西洋人に対してコンプレックスを感じているから自分を変えようと思いがちです。でも、美容師としてまずベーシックができていないとセンスは発揮できません。そんなことを思いながら現実逃避していた自分に気づき、何が一番適しているのか考えた結果、美容師として日本で頑張ることだと思ったんです。その後、ビザの関係もあり、お礼と「今後は自分に言い訳しない生き方をします」と言ってロンドンのサロンをあとにしました。それから見聞を広めようとパリにも渡りましたが、やはり日本が一番いいと再認識して帰国しました。帰国後に就職するサロンを探すことになり、運良くエイト&ハーフの池部隆司さんに雇っていただきました。当時はまだ22歳でカットもできないレベル。こんな自分を拾っていただいた恩を返そうと必死で頑張りました。でもなぜか不安はなく、自信ばかり持っていました。何しろ、ポジティブな人間でしたからね(笑)。

broocH代表。東京都出身。東京マックス美容専門学校卒業。都内1店舗を経て、ロンドンのサロンで勤務。帰国後、1店舗を経て2006年に東京・原宿にbroocHをオープン。『ヒトメ置かれる存在』をコンセプトに多くの女性客から人気を得る。2011年に姉妹ブランドのkoti BY broocHを設立。2012年にはネイルサロンのRosettをオープン予定。現在、サロンワークを中心にヘア雑誌・ファッション誌・広告・カタログ等の撮影に携わりヘアメイクとしても活躍。また、セミナー講師や美容メーカーと協力してスタイリング剤の開発も行う。

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