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飯島秀昭さん/SOHO 蒼鳳代表

今井さんから教わった『サスーン・カット』に衝撃を受ける。それまで不安だった自分の技術に自信も持てた。1パネルずつの集合が面になりそれが立体的なデザインになる。まさにカットは、毎日を大切に生きる人生の縮図だと感じた。

ライター 前田正明 | カメラ 好川桃子 | 配信日 2007.9.6

今井さんの厳しい教えの中に自分の生き方を見い出した

今となっては笑い話ですが、今井さんに断られても通い続け、三日目に採用していただいたのは、まぎれもなく私の粘り勝ちでした。それにしても、当時の今井さんは仕事に関しては厳しい人でした。今井さんは、「職人は見て覚えろ」といった昔気質なタイプ。カットをした後で、他にもアシスタントがいるのに、「飯島、ブローしろ」と指名された時は嬉しくて一生懸命しました。でも、「今日はきれいにできたな」と思ってチェックをお願いしたところ、「よーし、水スプレー」といってやり直すんです。たった今、私がお客様の髪を水スプレーでブローしたばかりなのに。また、店内で見て学んでいる時も、私の姿勢やポーズが悪ければ、いつも注意されていました。下積み時代は、何もしなければ怒られ、何かをしまた怒られ、ある時は今井さんと目が合っただけで怒られていました(笑)。でも、今考えると、今井さんに何度も怒られたからよかったんだと思います。あの時、示していただいた厳しさの中に、私の仕事に対する姿勢や自分の生き方を見い出すことができたのですから。

造形美学ともいえる『サスーン・カット』に大きな衝撃を受けた

そんな私がデビューしたのは、忘れもしない1974年5月3日。「飯島、カットしろ」といった今井さんのひと言で、記念すべき美容師としての原宿デビューの瞬間が訪れました。当時、私はまだ23歳。それまで、勉強会で100人くらいのモデルをカットしていましたが、突然の指名で完全に宙に浮いてしまい、恥ずかしながらどんなスタイルに切ったのか覚えていないんです。でも、そのお客様の髪をカットし終えた時に、これまでにない大きな喜びを感じたことは確かでした。今井さんは、アメリカ・ビバリーヒルズの『ヴィダル・サスーン』で修行し、日本に『サスーン・カット』を広めた美容界の草分け的な存在です。そんな今井さんのカット理論に、大きな衝撃を受けました。点の集合が線になり、線の集合が面になる。そして、面の集合が一つの立体になるという、まさに美しいヘアスタイルを創るのに適した画期的な技術理論だったんです。これはある意味で、人生と同じだと思いました。一日を積み重ねて一週間になり、やがて一ヶ月になる。さらには一年が積み重なり一生に…。カットを学びながら、人生という生き方も学んだ気がしました。

憧れの海外生活を送るため移民としてブラジルに渡る

私は今まで、お客様の髪を何人も切っていながら自分の技術に自信が持てなくなり、不安を抱きながら仕事をしていました。それが、今井さんのサスーン・カットに出会えたことで、やっと納得のいく理論と技術で自信が持てるようになりました。それ以来、カットが楽しくなり、1ヶ月で760人をカットしたこともあります。それくらいフル稼働し、最後の3年間はサロンワーク以外に講師としても働きました。そして、今井さんのところでは4年半お世話になり、1979年にブラジルに渡りました。実は以前から、海外にも興味を持っていて、私の教え子がブラジルで美容室を経営していることを聞いていたんです。そして、ある企業の社員さんがブラジルからの出張帰りに、彼からの手紙を届けてくれました。そこには「今、ブラジルはものすごく調子が良くて、2店舗目を出したいから手伝ってくれないか」という内容が書かれていました。当時、私は結婚していて2人の子供もいましたが、お互いの実家にもなんとか了承を得て、1975年6月15日に家族を連れて移民としてブラジルに渡りました…。

埼玉県出身。埼玉県理容美容専門学校卒業。1970年に美容師免許取得と同時に上京。都内のサロン数店舗を経て、原宿の今井英夫氏のサロンに入店。以後、サロンワークに従事する一方で、セミナーの講師として新カット技術の普及に努め人気を得る。いわゆる、『カリスマ美容師』の草分け的な存在。1979年にブラジル移住。1982年には美容室SOHO1号店をオープンし、ブラジル第2位の美容室チェーンに育て上げ現在に至る。近年は、『掃除』や『YOSAKOIソーラン・ブラジル』のイベント等により、ブラジルの人々に『日本人の心』を伝える活動を展開。稲盛和夫氏の経営に学ぶ『盛和塾』会員。『ブラジル掃除に学ぶ会』発起人会員。著書に『ぼくのブラジル武者修行』がある。

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