「フレームカット」で技術を統一し、クオリティの維持・向上
『LIPPS hair』のオリジナルカット技法「フレームカット」を矢崎さんが中心となって体系化されましたが、どんな狙いがあったのですか。
2003年頃に技術管理を任される立場になったのですが、当時は色々なサロンからスタイリストを寄せ集めた状態で全員技術も異なり、クオリティにも差がありました。
この先の成長を見据え、雑誌でヒットしたスタイルを全スタイリストが同じクオリティで提供できるよう、僕が中心となって技術マニュアルを作ることになったんです。
僕自身も感覚的にカットしていた部分をすべてロジカルに理論化し、スタッフ全員がほぼ同じクオリティでカットできるように体系化したものが「フレームカット」です。
自分の頭の中では早い段階で完成に近い形が見えていたのですが、それを言語化するのに苦労しましたね。
これを全部覚えれば1人前のスタイリストになれるよう、教育カリキュラムも連動させて組み立て、様々な試行錯誤を繰り返して徐々に作っていったので完成まで5年くらいかかったのですが、5年経つと最初の頃に作ったものが古くなってしまい……。
常に新しいものに変え続けて今日に至ります。今年の4月には内容をフルチェンジし、技術動画も撮ってスタッフに配信する予定です。
デビューまでが早まり、スタイリストの仕事効率もアップ
2015年にアカデミーが開校し、いちばん変わったことは何ですか。
以前は毎日忙しくサロンワークをこなし、営業前と営業後は撮影をし、様々なミーティングもあって練習会の時間を捻出するのが難しく、スタイリストになるまで4〜5年かかるのが当たり前でした。
「フレームカット」のマニュアルが2008年に完成しても、それを落とし込むための仕組みが機能していなかったんです。
そこでアカデミーを立ち上げ、定休日にアシスタントがいくつかのグループで集まって技術を学べるようにしました。
アシスタントは出勤扱いとし、営業日に代休を取得できます。
アカデミー内で技術レベルをチェックするだけでなく、各店舗でもチェックするのですが、チェックする側=講師の育成も大変でした。
講師たちのクオリティにバラつきがあると店舗によって差が出てしまいますから、講師の技術統一とトレンドを取り入れたバージョンアップが非常に大事です。
アカデミーができたことによってスタイリストになるまでの期間が短くなっただけでなく、技術を身につけたアシスタントが営業でスタイリストを効果的にサポートできるようになったことで、スタイリストの売上をアップできる効果もありました。
たとえばパーマを巻けるようになるまで2年かかっていたものが数カ月で任せられるようになると、入客数を増やせます。おかげでスタイリストの仕事効率が飛躍的に向上しました。
若いスタッフの感覚と時代性を取り入れた教育法が大事
教育をしていく上で、大切にしていることは何ですか。

昔は「見て学べ」とか、デザイナーになるまでの精神的な鍛錬も大事だとされてきましたが、今はそれでは正直、通用しません。本当は自分で考える力をつけたほうがいいのかもしれませんが、今の若い世代は考える時間を待っていられないんです。
答えを教えてください、それを学びます、はい、わかりました、という……。
考える習慣を養おうと言ったところで理解されず、それが原因で退職してしまうかもしれません。
いい、悪いということではなく、それが普通の感覚なので、簡単に導き出せる答えはあらかじめこちらでまとめて提供し、それを学んでもらい、その上で次のステップに進むというやり方にしています。
今はデザイナーになるまでの期間を3年以内に設定していますが、今後は2年以内のデビューでクオリティは更に上げていく育成にしています。
僕は2022年12月でハサミを置き、1月から後進の育成に専念しています。
会社が大きくなり、技術もどんどん進化していく中で、会社の成長のためには僕が教育に専念することがベストだと考え、決断しました。
何かに特化してスタイルを打ち出して集客につなげる
サロンでSNSの打ち出しをどう工夫されていますか。
メンズ主体で打ち出しているのですが、その中でもパーマやカラーなど特定の分野に特化して打ち出すようにしています。
スタッフは、まず店舗内で先輩たちと相談し、どの分野に特化して発信していくかを模索します。
それが決まったら撮影をして投稿し、反応を見て「これは違うな」とか「これは当たった」というのを見極め、当たったスタイルの精度を高めてさらに発信していく流れです。
アシスタントの頃からお客様の了承を得てスタイルをアップしていけば毎回モデルで撮影をしなくても投稿できますし、デビュー後のお客様の見込みも立つようになります。
SNSに上がっているスタイルは幹部を始めスタッフみんなが見てフォローしています。
技術的なことは僕らが、打ち出し方についてはプレスが中心となってアドバイスをしながら、スタッフがSNSを上手く活用できるよう指導しています。

矢崎由二(ヤザキ ユウジ)
山梨県出身。窪田理容美容専門学校卒業。都内サロンを経て2001年、『LIPPS hair』に入社。オリジナルカット技法「フレームカット」のマニュアル作りに尽力。2023年1月より、ハサミを置いて後進の指導に専念。クリエイティブやコンテストへの出場、ヘアショーへの出演など多方面で活躍中。

LIPPS hair
メンズヘアにいち早く力を入れ、存在感を高める。現在25店舗、従業員400名を超える規模に成長。2015年、「リップスアカデミー」を開校し、教育システムを抜本的に改革した。また、オリジナルプロダクツの開発やメンズアイブロウサロンの展開など、メンズビューティブランドへと進化し続けている。
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