色味や女性像など様々な角度からデザインイメージを共有
カッターとカラーリストの連携はどのようにしていますか。
そもそもカッターとカラーリストは同じ美容師といっても視点は違います。
使う脳が違いますし、髪の見方も違うと思うんです。カラーリストとペアになって1人のお客様をきれいにしていくのですが、ペアを組むカラーリストは何名かおり、誰と担当するかはお客様によって異なります。
どのカラーリストとも長い付き合いなので互いに信頼し合う関係性ができており、よい連携が取れています。
共に創り上げていくクリエイションも大きなきっかけです。
イメージを相談したりする中で、イメージを共有し合えるようになったのだと思います。
セッションする上では、たとえば同じ赤でも色々な赤があるので、「どんな赤なのか」という具体的な色味を共有することがとても大事ですし、形や色に限らず女性像や雰囲気などのイメージを共有することもとても大事です。
髪型に縛られず、デザインを色々な角度から共有することが日々行われています。
今はうちのサロンでも、カットもカラーも両方1人でやっているスタイリストもいます。
1人で売上を上げられるようになったほうが本人にとっていい場合もありますし、お客様のニーズや時代の移り変わりに応えるため、システムを少しずつ変化させています。
自分をアップデートさせ、人間性を成長させてくれるのがコンテスト
コンテストに対してのお考えを教えてください。

僕はデビューして1カ月くらいの頃に、植村から勧められて「三都杯」(主催/株式会社ガモウ関西)というコンテストに出場しました。
初めてコンテストに出場していきなりグランプリを受賞したのですが、デビューしたての僕に無謀な勢いがあったとはいえ、今思えばカットのクオリティもまだまだで、あれは本当に運が良かったのだと思っています。
それ以来『DADA CuBiC』では「デビューしたら三都杯にチャレンジしよう」という流れができていたのですが、最近はなかなかできていない部分もありますね。
今はその「三都杯」で審査員をさせていただいており、その他、様々なコンテストで審査をさせていただく機会があるのですが、決して上から見るという感覚ではなく、一緒にがんばりましょうという気持ちで臨んでいます。
美容業界は多様化が進み、美容師人生の選択肢が広がりました。どの道を進むかは自由ですが、僕は美容業界からクリエイティブと教育、この2つがなくなってしまったら未来がない、発展が難しいのではないかと思っています。
僕もそうでしたが、若い時は根拠のない自信や勢いがあるのでそれで突き進み、自分で自分のモチベーションを上げていくことが大切ですが、長く活躍していくためには常に自分をアップデートし続けなければなりません。
その1つがコンテストにチャレンジすることだと思うんです。コンテストで負けるってすごく悔しいですよね。チャレンジしなければそんな感情にもなりませんから楽です。
でも、コンテストにチャレンジして自分と向き合うことで、人間的に成長できるのではないでしょうか。
主催者はもちろん、審査をさせていただく僕たちもコンテストの意義や本質を伝える努力をしなければいけないと思いますし、みんなで美容業界を盛り上げることができたらいいなと思います。
自分の心も、見てくれる方の心も揺さぶる作品をつくりたいと思った
JHA大賞部門グランプリを2度受賞されるなど様々な賞に輝き、多くの美容師が憧れる美容道を歩んでおられますが、ご自身ではそれをどう捉えていますか。
大変すばらしい賞をいただいて光栄なのですが、僕は他人から何ごともさらっとやっているように見られる傾向にありますね、、、。
セミナーや雑誌での作品撮りなどにおいても全部「さらっとやっている」ように見られてしまうんですよね。とにかく粘り強く、納得いくまでしつこいんです。
わざわざあえて「苦労しています」という感じを出さなくてもいいと思いますが、自分なりに人一倍、努力はしているという自負はあります。
いい作品というのは表面的にカッコいいだけでなく、見る人の心を動かすもの。
作り手の生き様を感じるような、そんな感情を呼び覚ますものなのだと気づきました。
ちょっと大げさかもしれませんが、この時代に生きた自分の証を残したいとか、見ていただく方の心が少しでも豊かになるとか、そういうことが僕のクリエイションの根幹にあります。
賞を狙いに行くことも大事ですが、僕自身はそういうことより、見ていただく方の心も自分の心も揺さぶるような作品をつくりたいと考えて挑んだ結果だと思っています。
周囲の評価は気にしない。一方で全体を見る力も重要
コンテストで思うような結果が出ない方にアドバイスをお願いします。
先ほどもお話しましたが、「あと1段」上がれるかどうかが重要なのではないでしょうか。
結果が出ずにもがき苦しむこともあると思いますが、ひたすら己と向き合い、ただただ自分と戦うことが大事です。
僕はクリエイションに関しては「絵づくり」というより純粋にヘアデザインでずっと勝負し続けていて、ある時、それこそが自分の「核」なんだということに気づいたんです。
そこからは周りの評価を気にすることなく、自分がいいと思うものを追求してきました。
それは結構、勇気がいることですが、自分のクオリティを信じられるようになることが大切なんです。
とはいえ柔軟さも必要です。1人で戦っていると視野が狭くなり、客観視できなくなります。そんな時、僕はスタッフに「これ、どう思う?」と聞くこともあります。
自分の中に答えはあるのですが、人からはどう見えているのか一応、聞いてみたいなと。
作品に気持ちを入れ込むことももちろん大事ですが、一歩引いて見る力を持つことも大事で、それはサロンワークでも同じです。
サロンワークはお客様と近い距離感で仕事をしますから、ちょっと離れた目線で見ることも忘れないようにしています。
近くから見たり遠くから見たりしながら全体を見ることを心がけるというのは、デザインのみならず仕事全般に対して言えることなのかもしれませんね。

古城 隆(コジョウ タカシ)
1980年、大分県出身。大村美容専門学校(現・大村美容ファッション専門学校)卒業。地元のサロン1店舗を経て2000年、『DADA CuBiC』に入社。2005年より「D.D.A.」(DADA DESIGN ACADENY)の講師に就任。2019年、2021年JHA大賞部門グランプリ受賞。

DADA CuBiC
1997年、東京・原宿で創業。カット、カラーのスペシャリストが在籍し、高い技術力とセンスで多くのお客様から支持を集める人気サロン。
2003年、「D.D.A」が開校教育にも力を入れ、業界の発展に寄与している。
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