若い子の「気力」を鍛え、熱量を上げてやる気を引き出す育て方を
スタッフ定着で心掛けていることはなんですか。
スタッフを応援することを止めないことが重要だと思っています。
こちらが見切りをつけたら本人も気づくと思いますし、苦手なことは誰にでもあるので、そことどう向き合うか、1人ひとりのスタッフに根気よく寄り添うことを大切にしています。
練習がなかなかできない子がいたら、僕が朝早く来て練習をすればやりやすくなるかなとか。
僕が練習を「見てあげる」姿勢になるとみんな緊張してしまうので、僕はあえて普通に若い子の隣りでウィッグを切るんです。これを1週間くらい続けると練習する子たちが自然に増えます。
また、若い子たちの「気力」を鍛えることも大事です。
たとえば目標が達成できなかった時、それは先輩のせい?会社のせい?モデルがドタキャンしたせい?そうではなくて、自分には何が足りなかったのかを突き詰め、結果が出るまで諦めずにやり続ける気力、そこを鍛えてあげたいんです。
それができてこそプロフェッショナルですし、若いうちにその気力を身に着けてほしいですね。
先輩から怒られることは幸せなこと、気力を鍛えるために必要なことだと感じてほしいですが、怒る側も理不尽なことで怒ってはいけないですし、愚痴をこぼすのも控えてほしいと思っています。
若いうちは自分で自分の気持ちをコントロールして仕事に臨むことが難しいので、とにかく楽しくお店に来れるように僕が若いスタッフの熱量を上げ、やる気を引き出すようにしています。
一見、大変だと感じるかもしれませんが、根本的には「お客様がどうしたら喜ぶだろうか」と考えることと同じことなんです。
スタッフやお客様に対してそういった気遣いや心配りができて始めて「俺について来い!」と言えるのであって、なにもできてないのにそう言ったとしても誰もついて来ないでしょうね。
1店舗だからこそ僕の想いを共有し、みんなで仲良く前進できる
多店舗展開をするお考えはありますか。
独立志向の子が活躍できる場をつくるために店舗を増やすことを考えた時もありましたが、多店舗展開をするとどうしてもサロンの「色」が薄まると言いますか、僕自身の想いが違う方向に行ってしまう気がしていまして……。
『SHACHU』のようなトレンドサロンはちょっとしたボタンの掛け違いで衰退し、プランニングが崩れていきますから、1店舗でいいのかなと考えています。
今ぐらいの規模なら僕がやりたいことをみんなに直接伝えることができますが、店舗が増えるとそこの共有が難しくなったり、別の店舗と比較して不平不満が出てきたりするかもしれません。
でも、1店舗ならネガティブなワードが飛び交うこともなく、割とみんな仲良くコミュニケーションを取りながら同じベクトルに向かって進めると思うんです。
多店舗展開をする余裕があるのなら、もっと自分たちのやりたいことを深堀りする、もっと「尖る」と言いますか、『SHACHU』はそういうあり方でいいのではないかと考えています。
とはいえ僕は長年、カラーリストの地位を向上させ、活躍の場を広げたいという想いを持っていました。
そこで『CS made by SHACHU』というヘアカラー専門店をプロデュースし、2021年5月に渋谷に1号店をオープンさせました。
フランチャイズで全国展開をしており、現在20店舗あります。『SHACHU』の展開とは別に、全国の仲間たちと最先端のトレンドスタイルを一緒につくっていきたいと考えています。
また、『SHACHU』のスタッフがフランチャイズの店舗に出張して教えに行く機会も設けられれば、美容師生活に潤いを与えるだけでなく、もっと視野を広げられるのではないかと思っています。
若いスタッフに夢と希望を与え、見ていた美容学校生をワクワクさせたかった
2022年11月に開催されたTWBCでヘアショーに出演されました。どんなことを感じられましたか。
僕はヘアショーが好きなので自然と力が入りましたね。
「みやちのりよし」の世界観はある程度、認知されていると思うので「できて当たり前」と思われていたでしょうし、そこは少なからず体現できたと思いますが、今回のメンバーには若手スタイリストとデビュー間近の子が7人入っており、初めてステージに立つ子も多かったので、そこだけが心配でした。リハーサルの時からすごく緊張しているようで……。
当日は若いスタッフはもちろん、モデルさんまで固くなってしまい、僕が固くなってしまったらもう終わりだと思い、自分のことよりも出番の直前までみんなを楽しいムードに持っていくことに必死でした。
ステージには出ない子も含めスタッフみんなでアイディアを出し合い、協力し合って1つのものをつくり上げるのは、まるでお祭りのようで楽しかったですね。
見ている美容学校生をワクワクさせたいというのも狙いの1つでしたし、若いスタッフたちにも夢や希望を与えられたかなと感じています。
「日本一の美容師になる」と意気込んでこの業界に飛び込んだのですが、TWBCでの他サロンさんのヘアショーを見て感動し、すごい人がたくさんいることを痛感しました。
素晴らしい方がたくさんおられるので、何を持って日本一の美容師とするのか多分決められないと思いました。
日本一の指針となるものがカラー支持率なのか、僕のことを日本一と思ってくださる美容師さんの数なのか、色々あると思いますが、何かの日本一の1人でいられたらいいなと思います。

みやち のりよし(ミヤチ ノリヨシ)
1984年、岐阜県出身。山野美容専門学校卒業。都内1店舗を経て2014年に『SHACHU』を設立。インスタグラムのフォロワー数は30万人を超える。サロンワークの他、カラースペシャリストとしてセミナー講師や商品開発など多方面で活躍中。

SHACHU
カラー特化型サロンとして若い世代を中心に高い支持を集める。『シャチュー』とは、坂本竜馬とその同士20数人によって結成された日本初の商社兼私設海軍である「亀山社中」が由来。「社中」には「仲間」の意もある。渋谷で最先端のデザインカラーを提供し、渋谷系カルチャーを牽引している。