case 4. BIG EYE 阪急スクエア店
お客様にとっては個室、スタッフにとっては大箱、を実現
塩田編集長 セット面を普通に並べるだけなら、その2倍は置けますか?
土手下 そうですね。でもそれでは面白くないですし、人の動きを未来的にしたいと思い、ドーム型のセット面を作りました。大型店なので、スタッフ同士のアイコンタクトなどの動きに配慮しています。
塩田編集長 オーナーさんからはどのような希望があったのでしょうか。
土手下 スタッフの人数が減ってきているので客単価を上げたいというご要望を受け、席数を減らすことにしました。ただ、リピートのオーナーさん(2店舗目)なので、基本的には任せていただけた部分が多かったので、いろいろと提案しました。今までオープン空間のお店なので、いきなり普通の個室にするとスタッフの動きが悪くなるのではないかなと思い、パーティションの高さを140cmに設定したのも僕の提案の一つです。
塩田編集長 140cmなら、立てばスタッフ同士は見えるのでアイコンタクトできたり、教育の面でもこれまでの大箱の時と同じ感覚だけど、お客様にとっては個室、ということですね。
土手下 そうなんです。また、パーティションは人の印象に残るものにしたいという思いもあり、R状にしています。実は、R状にすることで小声でも会話ができるという効果もあるんですよ。
湯口 サロンの良さを生かしながら分かれている空間になっているんですね。
土手下 お客様やスタッフの方の状況を見ながら提案したのがよかったと思います。
case 5. SESSION
10cmの隙間にこだわった和テイストの個室空間
湯口 お客様は後ろ向きだから気にならないわけですね。
土手下 そうなんです。また各部屋には換気扇をそれぞれつけてはいますが、完全に仕切ると空気の流れが悪いので、上に10cmの隙間を開けています。隣の声がまったく聞こえないのも不安になってしまうので、多少の開きがあるほうが閉じ込められた感が払拭でき、かえっていいと思うんです。
小林 そうですよね。完全個室にすると女性スタッフが大丈夫か?という問題もありますよね。心配なら防犯ブザーをつけますか?という話も出たり。
土手下 このお店では最終的にはお客様・スタッフ、両方のために防犯カメラを全部つけました。また、以前から行っていた訪問介護をやめ、受け入れられる体制を整えようということで、一番奥の部屋はストレッチャーで入ってきても大丈夫なようにしています。
塩田編集長 まさにあらゆる層のお客様に来ていただきたいということですね。
土手下 個室化の効果なのか、コロナ禍においてもSESSIONさんは影響がほとんどなかったとおっしゃっていましたね。逆に商圏エリアが広がって客数が増えたくらいですと。
湯口 コロナ禍の影響から個室利用料がかかっても個室にしたいというお客様も多いと聞きますからね。
case 6. Pacific Dazzle 神戸三宮店
バリエーション豊富な個室がお客様を育てる
土手下 4店舗目の出店で、オーナーさんの友人とコラボして本や雑貨を販売したりドリンクを提供したりして、付加価値をつけています。
塩田編集長 ブックカフェみたいな待合ですね。
土手下 はい。Pacific Dazzleさんはオープンスペースの席と、半個室と個室があり、いきなり個室というのに抵抗があるお客様は最初は半個室にお通してから、ゆくゆくは2階にある個室をおすすめするようにされています。半個室のセット面はレースカーテンで仕切っています。カーテンなので体が当たっても痛くないので、若干ピッチは狭めに設計しています(1600mm)。また、2階には空間の真ん中にバディルームがあり、親子や夫婦などお連れさまと一緒に施術できるようになっています。バディルームは4席あり、真ん中(2席・2席)で仕切れるようにもなっています。もともと単価が高めのサロンさんで、個室をレベルアップしていくことでお客様を育てていくという意図があるのでしょうね。
塩田編集長 色々なパターンのセット面があり、スタッフの方は色々な状況に応じて動かなければいけませんから、ハイレベルなスタッフがいないと難しそうですね。
土手下 確かに。でも実はPacific Dazzleさんは離職率が低いんです。単に個室・半個室にしたいというより、経営的にこうしたいからスタッフはこう動く、だからこういう店づくりが必要、というのがつながっているんです。
塩田編集長 なるほど。お客様のための空間であり、労働環境を整えるための空間でもあるんですね。いかにいい人材を採って辞めさせないか。そのためにオフィスを充実させるという事例と似ているかもしれません。
土手下 僕が個室化を推したのではなく、オーナーさんの要望を聞いた結果この形になった、という感覚です。オーナーさんに先見の目があった、と感じています。