その人をもっとも輝かせる、美しいスタイルをプロが提案
スタイル提案の秘訣は何ですか?
ベーシックな技術を極め、美しいスタイルを提案することが大事です。「お客様が喜んでいるから、これでいい」というのはダメだと思います。お客様の言う通りにするのではなく、お客様の間違った思い込みを取り払い、どうしたらその人をもっとも輝かせることができるかを考え、提案できなければいけません。予約をいただいたら、お客様が来店するまでの間にどんな提案をするか考えておかなければいけないのに、来店した途端「今日はどうします?」と聞くのはNGです。予約はお客様のために準備をするシステム。それがプロの仕事です。一番いい美容室は、ノンオーダーで座ったらきれいに、今っぽく、自分らしくなれる美容室。それが理想です。とはいえ若いスタッフからベテランのスタッフまで色々いますから、中にはお客様に寄り添う形もありつつ、どちらもバランスよくいるというのがいいのではないかと考えています。
まだ誰も知らないものをつくってほしい
作品撮りはどんな形でやっていますか?
毎週1回、各店舗から1人ずつ本店に来て、営業中に作品撮りをしています。撮影は僕がします。子どもの頃からカメラが好きで、独学で色々学びました。スタッフの今のカットやニュアンスをチェックするいい機会でもあります。撮った写真はホームページやSNSにアップして、スタッフが美しいと思っている作品や景色をお客様に感じてもらえるようにしています。テーマは決めず、そのモデルさんを素敵にするというのが課題。今流行っているものをつくって世の中に寄せていくのではなく、まだ誰も知らないものをつくってほしいと思っています。まずはモデルさんを探すところからスタート。自分の足で探してゼロからそのモデルさんと関係性を構築していくということこそが大事なのです。
新潟で生まれたカットが世界に伝わる喜びを知る
“THINK GLOBALLY、ACT LOCALLY”について教えてください。
この言葉は、世界規模で物事を考えて地域に役立てていく、という意味です。反対に地域で生まれたものが世界で役立つこともあります。僕が世界で見てきたカッコいいデザインやライフスタイルなどを新潟にフィードバックしたり、逆に新潟で生まれた考え方や技術が世界で役立ったり。たとえば新潟のお客様に喜んでもらえることをやってきたら、それは世界の人も喜ぶようなことだった、というような現象が実際に起きています。新潟は大きな川があって風が強いので、風が吹く中で髪を揺らしながら切ってみたら、まとめやすくてかきあげた時に美しい、どう風が吹いても乱れてもカッコよく見えるスタイルになりました。そういうことを海外に教えに行ったりしています。ユニバーサルデザインや、骨格や髪質の条件の悪い人のために生み出された技術を一般の人でやってみたら、すごく簡単にスタイリングできたりとか、そんな事も当てはまりますよね。そういう行ったり来たりの関係性が素敵だなと思います。
ローカルで美容師をやる良さを理美容師の卵に伝えたい
「ローカルサミット」はどんな活動ですか?
東京で美容師をやることだけがフィーチャーされがちですが、ローカルは自然が近くにあり、タイムレスで、ローコストで、ライフスタイルがとても充実しているので、そういう環境の中で美容師を続けていくことは素晴らしいことだと思っています。たとえば子育て中の美容師さんでも、近くに親が住んでいればサポートを受けやすく、美容の仕事を続けやすくなります。そんな思いを共有できそうなサロンが他にもたくさんあるので、時々集まってお互いのいいことを発表し合おうと立ち上げたのが「ローカルサミット」です。東京に出るといいことばかりという概念だけが表面化していますが、逆に田舎に残ったほうがクールでカッコよくて充実しているよと。そういう話はなかなか情報として出てこないので、僕たちが情報発信していこうと活動しています。高知県や愛知県などのサロンさんと一緒にサミットを開いたり、美容学校に出向いて地域の若い理美容師の卵たちにローカルの良さを伝えたりしています。

由藤秀樹(ヨシフジヒデキ)
SNIPS代表。
神奈川県内のサロンを経て1998年、新潟市にSNIPSをオープン。国内・海外でのセミナー活動も多く、アジア各国の理美容業界の教育と発展に尽力、多くの美容師から支持を得ている。

SNIPS
コンセプトの異なる4店舗を展開。2013年には本店を「SNIPS LIFE DESIGN」へとリブランディング。デザイン力でその人の生活や環境、ひいては人生を豊かにすることをテーマとしている。