仲間に恵まれ、自分の想いをサロン名に
SIXを立ち上げた当時、大変だったことは?
1年半くらいそのサロンにお世話になり、2017年にSIXを立ち上げました。最初は6人でスタートし、そのうち1人がすぐ妊娠して若干、慌てましたが、女性が多いサロンなのでそれも覚悟のうちでした。美容師としてというより、人としてちゃんとお付き合いができる仲間に恵まれたことは本当にありがたいことです。SIXというサロン名は、僕が大切にしたいと思っていることが6つだからです。「スタッフ・お客様・お店・仕事上の関係者・デザイン・家族」この6つです。僕は元々、経営には興味があったので、経営が大変だという思いはないのですが、独立に際してたくさんの資料を書かなければいけなかったのは、リアルに辛かったですね(笑)。
急激に流行らせるのではなく、少しずつ層の厚いお店に
SIXをどういうお店にしたいと思いましたか?
“SIXってこういうビジュアルです”という作品を作ることは簡単ですが、あえてそうしないことにしました。今の時代、イメージをつけることは簡単ですが、一度作ったイメージを変えたり消したりすることはとても難しいんです。“SIXってこういうお店です”を全面に打ち出すと、それに賛同してくれるスタッフやお客様は来ても、そうでない方は逃します。流行が変わるたびにイメージを変え続けるにはものすごくパワーが必要なんです。僕はオールマイティなお店にしたかったので、急激に流行るお店は目指しませんでした。“SIXって明るめカラーがすごいよね”と言われることがあったとしたら、それは明るめカラーを施術した人ががんばっているという証拠。少しずつスタッフが成長し、少しずつSIXらしさが加わって、少しずつ層の厚いお店になればいいと考えています。経営者が決めたレールにスタッフを乗せてグイグイ引っ張る経営法もあると思いますが、僕は自然の流れで決めていくタイプ。忙しくなったら拡張する、というくらいの気持ちで、その時いるメンバーで決めていきたいんです。型にはめ過ぎず、そこで働くスタッフが自由に自分のスタイルを表現できる環境を作っていきたいと思っています。
みんなに新規客が来るように工夫を凝らした
集客はどのようにしたのですか?
最初は僕を目当てに来てくれる方に偏りがちだったのですが、スタッフみんなが潤うことがベストなので、僕ではなくみんなに新規客が来るようにするにはどうしたらいいかを考えました。思いついたのは、僕の新規客の価格を上げることと、誰でもできる技術を作ること。例えば、SIXオリジナルカラーのカラーレシピを作って、僕じゃなくても同じカラーができるようにしました。たくさんのお客様を担当することで、僕が経験して楽しかったことをスタッフにも味合わせてあげたいんです。そのためにスタッフには自分は何が好きなのかを考え、自分が好きなデザインを大切にしてほしいと思っています。おかげさまで2019年には2フロアに拡張することができました。別の場所で店舗を出すことも考えましたが、今のメンバーはみんなで一緒にいたほうがより成長すると考え、ちょうど下のフロアが空いたのですぐ借りました。
自分の感性を信じ、自由にデザインを突きつめてほしい
スタッフ教育はどうしていますか?
SIXのデザインに決まりはありません。OKかどうかのジャッジはしますが、みんな自由に自分のデザインを突きつめてほしいと考えています。僕が作品撮りに夢中になっていた時、ヘアカタログというより写真集をイメージして、モデルさんを座らせたり、髪を触っていたりするポージングも取り入れ、自由にやってみようと試行錯誤していました。デザインに対して固定概念を持たず、地に足をつけずにふわふわと、その時の気分や「好き」「嫌い」「可愛い」を大切にし、作品作りをしました。好きなテイストは1人ひとり絶対あるものですが、それがずっと同じテイストのまま続くわけではないと思うんです。必ず変わる時が来る。それでいいんです。もっと可愛く、もっとこうしたほうがいいんじゃないか?とその時々の感性でふわふわとやってきた結果、型にはまらず自由にデザインができるようになったので、スタッフにも自分の感性を大切にしてほしい、それだけは伝えています。

久保雄司(クボユウジ)
SIX代表。
都内3店舗を経て2017年、表参道にSIXをオープン。サロンワークの他、雑誌や広告、TVなどでヘアメイクとしても活動し、全国で美容師や一般の方へのイベントも行う。2016年に『#クボメイク』(講談社刊)を出版。多方面で活躍中。

SIX
都会の喧騒を忘れさせてくれるような閑静な街並みの中に融合しつつ、ひと際ハイセンスな空間が目を引く。一人一人の魅力を引き出すスタイルや、サロンで過ごす特別な時間を提供し、お客様にとっての“一番”を追求。今もっとも注目されているサロンのひとつ。