高木 裕介さん(U-REALM)

両親の反対を受けながらも、一流の美容師を目指し北海道から東京へ。現実の厳しさに挫折しながらもサロンを渡り歩き、ヘアメイクの仕事と出会う。美容師としての技術を磨くため日々練習を積み重ねながら、ヘアメイクの仕事をしていくことで出会った人との縁を実感。自身の夢を叶えるため独立し出店。挫折を乗り越え、希望に向かい走り続けている。近年では、同じ志を持つ仲間とクリエイティブ集団「東京ブレンド」を結成し業界の活性化にも取り組んでいる。

ライター 前田 正明 | カメラ 藤村 徹 | 配信日 2018.3.22

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憧れのSHIMAを目指して北海道から東京へ

北海道釧路市ご出身との事ですが、東京で美容師になったきっかけを教えていただけますか?

高木 裕介さん(U-REALM)

私が学生の頃、美容業界は今ほど華やかさがなく、まだ“職人”というイメージが強い時代でした。だから、カッコよさに憧れたというよりは、手に職をつけて仕事ができる人間になりたいという気持ちで目指しました。ところが、厳しい世界だからという理由で両親や学校の先生から反対されてしまったんです。その後、親から東京に行って美容師になる覚悟があるのなら認めると言われました。友達も多く地元が大好きだった私は、北海道を離れる事に多少の抵抗はありましたが、色々調べていくと東京にはSHIMAというすごい美容室があることを知りました。それまでは東京への憧れもなく、東京のサロンも全然知りませんでしたが、こんなカッコいいサロンで働けるのなら東京に行ってもいいかなと思い、山野美容専門学校に入学しました。専門学校時代はお金がなくアルバイトをしながら勉強をしていたので、東京にいながら遊ぶことはまったくなかったのですが、SHIMAへの入社を夢に奮闘していました。

一流サロンでの厳しい現実に直面

競争率の激しいSHIMAに入社した経緯や美容師になって感じたことは何ですか?

当時のSHIMAには1000人くらいの応募者があり、採用されるのはわずか25名くらいでした。1次面接は集団面接で、1人1~2分の質疑応答。2次の代表面接に進むには、一瞬で印象に残る必要があると考えました。なんとしてもSHIMAに入りたかった私は、当時、これだけは誰にも負けない!という所をアピールしようと考え、体力には自信があったので、片手3本指で腕立て伏せをしました(笑)。それが功を奏したのか採用していただきました。憧れのサロンに入社して感じたのは、とにかく厳しい世界だということ。技術レッスンの質と量や接客方法は言うまでもなく、シャンプー時の姿勢やサロン内での立ち姿、さらには着ている服のすべてにチェックを受けました。一流のサロンはこうも厳しいのかと驚愕し、1年で挫けてしまったんです。SHIMAでの教えは、今振り返っても挫折と共にプロとしての意識を教えてくれた私の原点だと思います。その後は、ULTRA Cに入社しました。実は、ULTRA Cの成田裕二さんは釧路の隣、根室市のご出身でした。オープンしてまだ3年くらいでスタッフの募集はしていなかったのですが、思いきって応募したところ同郷のよしみで採用していただきました。

高木 裕介さん(U-REALM)

タレントのヘアメイクがきっかけで予約が殺到したアシスタント時代

新人の頃の夢やその時に考えていたことは何ですか?

高木 裕介さん(U-REALM)

当時はカリスマ美容師がブームになった頃で、一流の美容師になってヘアメイクの仕事をしたいというのが私の夢でした。時代的に1カ月の売り上げ100万円が一流美容師としての目安と言われていましたが、カリスマ美容師の中には、1人当たり500万円の売り上げをあげる人もいると聞き、自分もそうなりたいと考えていました。当時の私はまだアシスタントで、スタイリストデビューを目指して奮闘していました。その時出会ったモデルやタレントの卵たちとは、「みんなで売れよう」と励まし合い頑張っていたんですが、そのメンバーの中にデビュー前の優香さんがいて、最初のカットモデルをしてくれたんです。その後、彼女が突然売れてCM女王になったことで、私にもTV局から取材がきました。その影響でサロンに予約の電話が殺到したんですが、私はまだアシスタントだったので、営業後に数人ずつカットモデルとして接客しました。休みも返上でスタイリストデビューのために必死で勉強をしながら、深夜までカットモデルを接客する日が1年も続きました。体力的にも大変でしたが、毎日が新鮮で本当に楽しかったです。しかし、アシスタントとしてもままならないのに突然名前だけが有名になったことでULTRA Cの方々にも迷惑をかけてしまい、自分の夢との板挟みになっていた時代です。

知名度が上がれば集客や売り上げアップのチャンスになる

そこまで美容師としてヘアメイクにこだわった理由は何ですか?

私がサロンワークだけでなく、ヘアメイクの活動もしたいと考えたのは、カリスマ美容師ブームで注目を集めている今、知名度が上がれば集客や売り上げにつながるチャンスだと思ったからです。ところが、当時勤めていたサロンはヘアメイクの仕事は積極的にはやっていなかったので、他のスタッフからすれば異質な存在だったと思います。その後、私がようやくデビューできた頃にはカリスマブームも下火になり、早く知名度を上げたいとジレンマに陥っていた時、信頼できる先輩に相談をしました。そこで、独立を予定している宮村浩気さんを紹介していただき、AFLOATのオープニングスタッフとして参加させていただける事になりました。宮村さんはさまざまなメディアでも活躍されていて、ヘアメイクのテクニックなど大きな影響を受けました。何より驚いたのは1カ月の売り上げが当時で1400万円もあったということです。これは本当に衝撃でしたね。

ヘアメイクの仕事風景

人一倍の練習を積み重ね、接客では期待以上の仕上りを心がけた

一流の美容師を目指す上で最も努力したことは何ですか?

AFLOAT時代、まわりはHAIR DIMENSIONの元スタッフばかりで、自分だけカット技法が違うので早く技術をマスターしようと頑張りました。当時の私は、本当によく練習をしていましたよ。今でも自分より練習をしているスタッフは見たことないと思うほど、練習を重ねました。そんなある日、「技術はまだまだだけど、センスはいいね」と宮村さんに褒めていただいたんです。その言葉が励みになり、初月が36万円くらいだった売り上げを徐々に伸ばし、1年後には300万円を超えて副店長に、そして2年後には500万円に達して店長に抜擢されました。苦労もありましたが、自分がなりたい姿だったので、毎日興奮していたのを今でも覚えています。サロンワークでは、技術と同時に接客にも力をいれていました。どうすればもっといいヘアスタイルになるんだろうか、他にも良い手段があるんじゃないだろうかなどと模索しながら、常にお客様のことを考えて接客をしていました。例えば、ちょっとした言葉を添えてヘアスタイルの提案をし、期待以上の仕上りにすることを心がけるなど、自分本位にならないように気をつけました。それがお客様に評価していただいたのかなと思います。私にとってAFLOATにいた5年間は、仕事の楽しさと学びを得ることが多かった時代です。

高木 裕介さん(U-REALM)

自分のキャリアを追い求めた結果、大勢のスタッフが退職

独立するきっかけやその後に苦心したことは何ですか?

U-REALM

AFLOATには5年ほど勤めさせていただき、独立を意識し始めたのは退職する半年前でした。きっかけは、“自分の力を試したい!!”というのもありましたが、やりたい事が増えたというのが理由です。宮村さんに相談し理解していただき、最初の4年はフランチャイズで出店させていただきました。それが27歳くらいの時です。出店に関して、当時の本店をそのまま譲り受けたので、物件探しに関する苦労はありませんでした。しかも、担当していたお客様やスタッフの帯同も許可していただいて、本当に良い条件でU-REALMをオープンさせていただきました。ただ、オープンしてからが大変でした。独立してすぐに女性誌のヘアメイクを担当させていただく機会が増えたんです。自分のキャリアを優先してしまい、サロンに出るのが週1回程度、スタッフに任せきりできちんと経営を見ていませんでいた。その結果、スタッフたちが疲弊してしまい、ほとんどのメンバーが退職してしまったんです。このままではサロンを続けられないと思い、宮村さんに説明しフランチャイズ契約を打ち切っていただき、完全独立させていただきました。当時はヘアメイクのお仕事がコンスタントに入っていたので、自分ひとりだけなら資金の返済には困らないと考え「一人で一からやり直そう」と思っていたのですが、私についてきてくれるスタッフが10人ほど残ってくれたこともあり、移転をし、彼らと一緒にサロンを続けていくことを決意しました。それが今の幹部たちで、いずれ彼らに恩を返したいと考えています。

情報化社会で可視化された今こそ待遇面を確立すべき

スタッフに対する教育や接し方などで心がけていることはありますか?

U-REALMのスタッフと

実は、彼らの自主性を重んじているので、これといった教育カリキュラムはないんです(笑)。ただ、スタッフの待遇面はオープン当初から確立しています。インターネットやスマートフォンの普及率が高まり、SNSの活用などで2010年頃からさまざまなことが可視化されてきました。例えば、給料体系や福利厚生など昔はあまり表に出なかった情報も、今は友達や他のサロンスタッフと情報を交換したり、調べることができます。経営者がその点をおろそかにすると、優秀な人材がこの業界に来なくなるという可能性も考えられますよね。この問題は特に地方サロンの方が迅速に対応されていて、今まで潤沢な人材がいた東京の人気エリアのサロンは遅れをとったと感じます。若い人たちに魅力を感じてもらう以前に、社会的な体制を確立しないと親御さんたちも美容師になることを応援されないでしょう。今の方々は、かつてのような修行の世界ではなく、きちんと会社に就職する意識を持っていますから。また、情報が見えやすくなった分スタッフの不満も知ることができるので、原因を改善すれば定着率も上がり、逆に整備した分だけしっかり仕事をしてもらえます。U-REALMも先を見て待遇面を整えた結果、今ではグループ全体で100名を超える会社になりました。SNSは苦手だからと経営者が敬遠すると、時代の流れに乗り遅れてしまう気がしますね。

各自の業務と責務を果たし、利益UPで会社に反映

経営者として大切なことや厳しい時代を乗り切るポイントをどうお考えですか?

U-REALM

この業界は、経営者がプレイングマネジャーであるケースがとても多い、特殊な業界です。一般の企業では社長が陣を取って指示を与え、社員がその業務にあたります。社長は経営方針を決めたり、資金を調達したり、時に他業種の方と会合して情報交換をすることで自社にメリットをもたらす役割も果たしますが、経営者がサロンワークに専念している間はその機能がストップするわけです。これは非常に効率が悪いと疑問に感じていました。会社の利益が上がればスタッフの給料や決算ボーナスに反映できるし、やむを得ない休業中も売り上げの補填ができます。スタッフの待遇UPと会社の発展のためにも、会社の利益は上げ続けていかなければならず、経営者にはその責任があると思っています。スタッフが働き続けたいと思える環境を作り、給料や福利厚生などを豊かにする事が、理美容業界の社会的地位の向上にもつながります。そこで私は、サロン業だけではなく、バーの経営や自社製シャンプーの販売などを実践して多角的にキャッシュポイントを広げました。売り上げはすべて会社に納めています。そんな考えを持たないと、従来のサロン経営だけでは今後厳しくなると思います。結果的に直営店を7店舗まで増やし活躍の場を広げることができました。私は、経営者もスタッフも各々の役割があり、その責務を果たすことが大切だと考えています。

業界全体の活性化を叶えるために同じ志のメンバーを集結

発起人であるクリエイティブ集団「東京ブレンド」についてお聞かせください。

東京ブレンドは、さまざまな人や考え方を持った美容室・美容師を巻き込むことで、大きな風を起こし、美容界を盛り上げようとする会です。結成は2012年で、私たちが若い頃に雑誌のページで腕を競い合ったライバルたちに呼びかけました。技術や知恵を共有し、東京のサロン、特に青山界隈からお互いの美容業界を活性化しようという目的でスタートしました。最初に特化したのがヘアメイクの技法でした。その後は、ヘアスタイルの創作だけでなく、写真撮影の技術などをレクチャーしながら、ホームページやSNSなどにアップしてPRや集客面に反映してきました。現在は、名古屋、大阪、福岡のサロンもメンバーに加わり、Salon Model Award Japanといったイベントや技術セミナーを開催したり、経営面に関する情報交換など多岐にわたって活動しています。今後は会費を安くしてもっと大規模に会員を募り、個々では為し得なかった業界全体の活性化を実現させたいと考えています。

東京ブレンドの活動風景

業界を変えるくらいのバイタリティを発揮して頑張って!

最後に業界の将来を担う若い人たちに対するエールをお願いします。

高木 裕介さん(U-REALM)

まず、美容業は本当にやり甲斐のある仕事だと断言できます。純粋にサロンワークは楽しいし、長く続けられる魅力のある職業だと思います。そう感じるためには相応の努力をし経験を積むことが必要ですが、お金をいただいているにも関わらず、お客様に喜んでもらえる仕事はそう多くないでしょう。江戸時代から長く続いている職業ですが、まだまだ未発達の部分も沢山残っている業界です。つまり、これから向上していく可能性が沢山あるという事。そのひとつに美容師という職業に対してのイメージアップがあります。美容師=労働者や技術職のイメージを強くもたれている人はまだ沢山いらっしゃいますが、私はそのイメージを崩したいと考えています。そんな業界だからこそ、若い人たちの力で発展させることが可能だと思っています。ここ数年で徐々に変化の兆しが見えているので、歴史ある職業を変えるくらいのエネルギッシュさとバイタリティを発揮して頑張ってほしいですね。人の手による仕事の中でも、技術を高めるには奥が深く、どんなに時代が進んでもまだまだAI(人工知能)では難しい仕事ですから、腕を磨いて頑張ってください。

高木 裕介さん(U-REALM)

高木裕介(タカギユウスケ)

U-REALMグループ代表取締役。北海道出身。山野美容専門学校卒業。都内で数店舗を経て2005年にU-REALMをオープン。現在、直営7店舗・FC2店舗を展開。タレント・モデル・メジャーリーガー等を顧客に抱える他、ファッション誌、テレビCMなどのヘアメイクも手掛ける。話題のクリエイティブ集団『東京ブレンド』の発起人でもあり、全国でセミナー講師としても活躍中。

U-REALM

U-REALM

U-REALMはお客様のご要望以上のクオリティを追求し、常に新しいスタイルを探求する精神を持っています。お客様がより一層キレイになれる方法を、一緒に考えます。タレントやモデルが多数来店し、雑誌で活躍中の人気サロン。ワンランク上のかわいい&キレイを提案しています。


https://www.u-realm.com/

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